国連恣意的的拘禁作業部会の意見(A/HRC/WGAD/2020/58)原文

国連恣意的拘禁作業部会の意見の日本語訳

通報したいきさつ

日本では、出入国管理及び難民認定法に基づき入管収容が行われています。しかし、特に退去強制令書が出された人に対する収容は、期限の上限がなく、入管独自の判断で収容が行われ、収容する必要性・相当性も要件とされていません。収容を解かれるほぼ唯一の方法は仮放免許可を受けることでした。

ところが、2018年2月28日の入管の方針変更によって、仮放免がほとんど許可されなくなり、収容期間が著しく長期化しました。半数以上の人が6か月以上収容され、収容期間が2年、3年以上の人も増える一方でした。被収容者の間では大規模なハンガーストライキが発生しました。

2019年6月、ハンガーストライキをしていたナイジェリア人男性(収容期間3年7か月)が餓死するという痛ましい事件が起きました。この事件の後、入管はハンガーストライキに対して対処せざるをえなくなり、ハンガーストライキに参加していた被収容者に対して仮放免が許可されるようになりました。

ところが、ハンガーストライキに参加していた人に対する仮放免は、わずか2週間で、その後は直ちに再収容するという運用が行われました。数年間収容されてきた人に対して、わずか2週間の自由を与え再収容するやり方は、被収容者と支援者に衝撃を与えました。「まるで、水中で溺れている人に一瞬だけ空気を吸わせて、また水に沈ませるようなやり方だ」とも非難されました。

今回通報した2人の難民申請者は、長期収容と2週間仮放免の後の再収容によって、精神的、身体的にボロボロになっていました。日本の裁判所は助けてくれない、国連に助けを求めるしかない、という切迫した思いから、今回の通報に至りました。

恣意的拘禁作業部会の意見

この通報に対し、2020年9月25日、作業部会は2人に対する入管収容は、自由権規約、世界人権宣言に違反し、恣意的拘禁にあたるという意見を出しました。(国連恣意的的拘禁作業部会の意見(A/HRC/WGAD/2020/58)原文国連恣意的拘禁作業部会の意見の日本語訳

作業部会の意見の大きなポイントは以下の3点でした。

  1. 収容には法律によって定められた必要性と合理性の要件を満たすことを要求する基本原則に反し、自由権規約第9条第1項(恣意的な拘禁の禁止)に違反する。
  2. 入管収容について司法審査による救済が定められていない点で、自由権規約第9条第4 項(自由を奪われた者が裁判所で救済を受ける権利)に違反し、法的根拠を欠く恣意的な拘禁に当たる。
  3. 入管収容について無期限収容は許されず、自由権規約第9条(恣意的な拘禁の禁止)に違反する。最長期間は法律で定められなければならない。

作業部会は2人に対する収容が国際人権法に違反したことを踏まえ、国は2人に対して補償をしなければならないと要請しました。さらに、日本の出入国管理及び難民認定法について、自由権規約に整合しない部分を見直すよう要請しました。 国から2人に対してはまだ賠償がなされていません。