長期収容施設である東日本入国管理センター(牛久市)

入管法による身体拘束

出入国管理及び難民認定法(入管法)は、外国人の退去強制手続の中で収容ができると定めています。収容には2種類あり、

  • 退去強制事由に当たる疑いのある人を、入管が審査するために収容する「収容令書」による収容
  • 審査の結果、退去強制事由にあたるとして、退去強制令書が発付された後に収容される「退去強制令書」による収容

があります。どちらの収容についても、裁判所の司法審査はなく、入管が自ら決めることができます。

収容令書による収容は原則として30日間と定められ、さらに30日間のみ延長ができるとされています。退去強制令書が発付された人は、日本から強制送還されますが(52条3項)、入管法は「送還可能の時まで、その者を入国者収容所、収容場その他法務大臣又はその委任を受けた主任審査官が指定する場所に収容することができる」と定めています(52条5項)。これ以外に収容に必要な要件は法律上定められていません。また、収容期間の上限も定められていません。

入管収容施設

入管収容を行う施設には短期間収容するための施設(地方入国管理局の収容場)と、長期間収容するための入国管理センターがあります。

大きな地方入国管理局の収容場としては、東京(定員800名)、名古屋(定員400名)、大阪(定員200名)、横浜支局(定員200名)などがあります。入国管理センターは東日本(茨城県牛久市・定員700名)と大村(長崎・定員708名)の2箇所です。

内部は居室と共用スペースがあり、施設によって時間は異なりますが、だいたい午前9時から午後5時ころまでは共用スペースで洗濯室、シャワー室、運動場(時間制限あり)などを利用することができます。それ以外の時間は定められた居室にいなければならず、外から施錠されます。居室は和室で、トイレ、洗面台、ロッカーが備えられ、最大10名程度の被収容者が一緒に生活します。被収容者は公衆電話から外部に電話をすることができますが、外からの電話を受けることはできません。インターネット、パソコンの利用もできません。

食事は毎食弁当が配られます。カロリー基準を満たすために、ごはんや揚げ物の量が多いのが一般的です。また、腐敗を防ぐために冷まされた状態で提供されるため、温かい食事を取ることができません。

外部からの訪問者との面会は、平日30分程度、アクリル板で仕切られた面会室で行うことができます。手紙の授受は自由です。

収容施設内では、他の被収容者と話したり、運動場で体を動かすことはできますが、人生において大切なこと-家族と一緒に過ごしたり、働いたり、自由に活動することができません。いつまで収容されるかわからないまま世間から隔離されることで、誰もが疲弊し、人間として傷ついていきます。

大村入国管理センター(長崎)
東京出入国在留管理局(7階が収容場)

入管収容の問題点

全件収容主義

司法審査がない

期間の上限がない

全件(原則)収容主義

入管法は収容令書に基づく収容について、「入国警備官は、容疑者が第二十四条各号の一(注:退去強制事由のこと)に該当すると疑うに足りる相当の理由があるときは、収容令書により、その者を収容することができる」(39条)、退去強制令書に基づく収容について、「送還可能の時まで、その者を入国者収容所、収容場その他法務大臣又はその委任を受けた主任審査官が指定する場所に収容することができる」(52条5項)と定めています。

つまり、収容令書、退去強制令書のいずれによる収容についても、例えば「逃亡のおそれがあるとき」というような要件がなく、全件収容をすることができてしまうのです。身体の自由は重要な人権であり、常に原則でなければならず、全件(原則)収容主義は許されません。

司法審査がない

冒頭に書いたとおり、入管収容に司法審査はなく、入管自らの判断で収容しています。しかし、自由権規約9条4項は「逮捕又は抑留によって自由を奪われた者は、裁判所がその抑留が合法的であるかどうかを遅滞なく決定すること及びその抑留が合法的でない場合にはその釈放を命ずることができるように、裁判所において手続をとる権利を有する」としており、身体拘束には司法審査が必須としています。

また、入管収容からの解放手段として、入管法は保証金を納めさせて被収容者を釈放する「仮放免」を定めていますが、この手続にも裁判所は関わりません。入管は、仮放免を認めるかどうかは、入国者収容所長または地方入国管理局の主任審査官の広い裁量に委ねられている、と主張しています。

仮放免の請求を提出してから、仮放免の許否の決定が出されるまでの期間も法律上定められていません。入管は通常、2か月から4か月後に決定を出しており、不許可決定を出す場合も不許可の理由を教えてくれません。

さらに、仮放免の運用方針については、法務省入国管理局長が2018年2月28日に入管に対する内部指示を出しました。ここには「仮放免を許可することが適当とは認められない者は、送還の見込みが立たない者であっても収容に耐え難い傷病者でない限り、原則、送還が可能となるまで収容を継続し送還に努める」と書いてあり、多くの人が仮放免を受けられなくなってしまいました。このような方針も、裁判ではなく、入管自らの運用で決められてしまっているのです。

期間の上限がない

入管法には退去強制令書による収容の期間の定めがないため、いつまでも収容することが可能となってしまっています。2018年の仮放免運用方針の結果、仮放免が出されなくなり、収容期間が長くなってしまいました。全体的な収容人数が増えていること、特に6か月を超える長期収容者が増えていることは下図のとおりです。

期間の上限がない無期限の収容は、刑事であれば無期刑と同じです。いつ出られるか分からないというストレス、収容されていて何もできないという焦燥感で、精神を病んでしまう人が後を絶ちません。

これから変えるべきこと

全件(原則)収容主義、司法審査のない収容、無期限収容は、どれも国連恣意的拘禁作業部会から恣意的拘禁に当たると指摘されました。このように入管法には重大な問題があるため、恣意的拘禁が行われないよう改正する必要があります。

全件収容主義を改めて収容の要件(逃亡のおそれなど)を法律で定めること、収容期間の上限を法律で定めること、司法審査の手続を定めることが不可欠です。