カルロス・ゴーン氏の事件で世界の注目を集めたとおり、日本の刑事拘禁は国際基準から外れる多くの問題を抱えています。刑事裁判の判決が確定する前の「未決拘禁」(起訴前は捜査のため、起訴後は裁判のために勾留すること)と、有罪判決が確定した後の「既決拘禁」に場面をわけてご紹介します。
未決拘禁について
「未決拘禁」というのは、刑事裁判の判決が確定するまでの間に行われる勾留のことです。逮捕に引き続き捜査のために留置・勾留する場合と、起訴された後に勾留する場合が含まれます。
日本の未決拘禁は、過度に身体拘束が行われ、「人質司法」と非難されています。
”代用監獄”のこと
勾留決定後、身体拘束をする場所は、本来法務省が管轄する「拘置所」であるべきです。しかしながら、日本では勾留決定後も警察署の留置場で身体拘束をする「代用監獄」が常態化してしまっています。取調べ時間以外も捜査機関に留め置くことは、自白の強要に繋がる危険があり、国際的に大きな批判を受けています。
なかなか認められない保釈
日本には、起訴される前に保釈される制度がありません。
また、起訴後も、証拠隠滅や逃亡の恐れがあるとして、保釈が認められにくいのが現状です。保釈をされないどころか、広範な「接見禁止」(外部との面会や、手紙のやりとりが禁止されること)が付される件も少なくなく、長期間の身体拘束を受ける上、家族や仕事関係者などと交流することができず、社会生活に深刻な影響が生じることが少なくありません。
既決拘禁について
「既決拘禁」というのは、有罪判決が確定した後の身体拘束のことです。受刑者として懲役や禁錮、拘留に服する場合と、死刑判決を受けた人が執行までの間に拘置される場合が含まれます。
「悪いことをしたのだから、刑務所は苦しくてあたりまえ」でしょうか?受刑者でも誰でも当然に人権があり、守られなければなりません。受刑者もいつかは社会に戻ります。そのときに、立ち直り、再び罪を犯さないようにするためにも、心身ともに健康であり、また、社会で生きていく力がなければなりません。
昼夜独居拘禁
人は社会的な生物です。人との交流ができないと大きな精神的ダメージ を受けてしまいます。そのため、国際基準では、連続して15日を超える独居拘禁は絶対的に禁止となっています。しかしながら日本では、昼夜独居は実質的なものを入れると年間1000〜2000件もあります。中には10年以上の単独室収容者もおり、いちばん長い人では54年間も昼夜独居拘禁とされています(2016年)。
実質的に終身刑化している無期懲役
日本の無期懲役には法律上仮釈放の制度が認められています。しかしな がら、実際に仮釈放が認められるのは、無期懲役全体のうちわずか0.6%に過ぎません。その2から3倍の者が刑務所内で死亡しており、日本の無期懲役は実質的に死ぬまで拘禁される終身刑となってしまっています。
(2021年2月3日掲載)