国別訪問手続(カントリー・ビジット)とは

国連恣意的拘禁作業部会の活動の1つに「国別訪問手続」(カントリー・ビジット)があります。これは年2~4回、作業部会が国別訪問を行い、その国の刑事、入管、精神医療などあらゆる分野の拘禁施設を視察し、被拘禁者からヒアリングを行い、政府関係者、議員、NGO等と対話を行うことで、恣意的な拘禁の理由を考え、恣意的な拘禁の発生を防止しようというものです。日本は作業部会からカントリー・ビジットの要請を受けていますが、まだ受け入れていません。

恣意的拘禁作業部会 Country Visits(原文・英語)のページはこちら(外部リンク)

恣意的拘禁ネットワークほか「国別訪問手続(カントリー・ビジット)を直ちに実現するよう求める共同声明」(2020/1/20)はこちら

国別訪問手続についての付託事項 日本語訳

国別訪問手続でどのようなことをするのか、まとめた文書“Terms of Reference for Country Visits by the Working Group on Arbitrary Detention”の日本語訳です。

恣意的拘禁ネットワークによる日本語訳PDFはこちら

Terms of Reference for Country Visits by the Working Group on Arbitrary Detention(原文・英語)はこちら(外部リンク)


恣意的拘禁作業部会による国別訪問手続についての付託事項

1. 作業方法のパラグラフ25-32は、作業部会が如何に国別訪問手続を準備・実施するか、国別訪問手続に関連したフォローアップ活動の実施方法を含めて大まかに示している。しかし、これらの指令が適用され20年を経て、実務から得られた教訓を考慮して、これらの指令の改善と明確化のため、指令の更新及び解釈が必要となった。

2.  さらに、今回の更新は、国別訪問手続の準備、構成、フォローアップに必要なすべての関連情報を国家が利用可能とし、これは国別訪問手続の透明性、可視性、理解を高めることにもなる。

3.  最後に、この文書は、全ての利害関係者と一般市民に対して、作業部会の任務を知らせるものでもある。

国別訪問の目的

4.  国別訪問の目的は、当該国における自由の剥奪状況と恣意的拘禁の根本的理由をよりよく理解することである。

5.  日程は、訪問の合意が得られ次第、協議に基づき可及的速やかに設定される。

6.  合意後6ヶ月以内に訪問の日程を設定できず、2回の督促状を送付しても回答がない場合、合意は無効とみなされ、作業部会はその旨を政府に書面で通知する。

訪問の趣旨

7.  訪問は、協力的かつ建設的な対話の中で行われる。これらは、2007年6月18日の人権理事会決議5/2に基づく「特別手続任務保持者の行動規範」、国の国際的義務、訪問の目的に反しない受入国の法律、人権理事会の特別手続運用マニュアル、作業部会の作業方法を遵守して実施される。

訪問の準備

8.  訪問の日程が決まり次第、作業部会の事務局は、委員長または副委員長の監督の下、他の構成員と協議し、訪問の準備のため、政府、当該国の国際連合の事務所、その他利害関係者と連絡を取る。

9.  作業部会の任務に関連する当該国について入手可能なすべての情報が、委員が用いる背景資料及び国別評価の基礎となる。

10.  現地の国際連合の事務所には、特にロジスティクス、当該国における移動、通訳サービス、ホテルの予約、社会的弱者を代表する人々を含む市民社会との会合など、訪問の手配に加わることが求められる。

11.  自由剥奪場所の訪問において自由を剥奪された人とコミュニケーションをとる際、必要な信頼関係を確保するため、可能な限り現地の通訳者や受入国に居住する通訳者との連携を避ける適切な配慮をする。

12.  訪問には、国家当局、司法・立法・行政の代表者との会合、市民社会及びその他の関連の非政府組織の代表者との会合や自由剥奪場所への訪問が含まれる。

13.  これらの会議と訪問は、互いの合意により決定される当該国の首都及び国内の他地域のいずれにおいても行われるべきである。

14. 作業部会は、代表団の構成は委員長を含む少なくとも2名の委員を含まなければならないと決定する。例外的に、委員長が参加できない場合、副委員長が代理を務める。

15.  作業部会の構成員には、少なくとも2名の事務局員が同行し、必要に応じて通訳も同行する。

官公庁及び公的機関との会合

16.  会合の大半が、当該国への訪問の初期に行われることが好ましい。

17.  訪問のこの要素は、作業部会の提案に基づき、主として受入国政府によって手配され、当該国の三権のすべての関連上級職と会合する。計画は双方の合意に基づくが、変更される場合がある。

18.  当局や国家機関の代表者のリストは、各国の政治、行政、司法制度により異なる。具体的には以下のようなものを含む。

・外務省

 ・憲法裁判所、最高裁判所、控訴裁判所、第一審裁判所の裁判官及び刑罰執行の裁判官

 ・人権の促進・保護に関する国家機関

 ・オンブズマン

 ・自由剥奪場所の責任者

 ・法律、刑事司法改革、人権委員会の国会議員

 ・検事総長及び他の検察官

 ・司法警察、国境警察、移民警察の当局

 ・保健省と精神科病院の当局

19. 訪問準備において、作業部会との対話役を行うフォーカルポイントを政府が任命すべきである。作業部会は、必要に応じて後任者を指名できる。

市民社会の代表者や弁護士会の構成員との会合

20.  会合は、現地の国際連合の事務所との連携及び多様なパートナーの協力を得て、作業部会の事務局により手配される。これらの会合は、作業部会が選択する場所で開催され、下記の参加者例示リストに記載されている人の参加がありうる。

21.  市民社会からの参加者には以下のようなものがある。

・自由剥奪の問題に何らかの形で関わる非政府組織(NGO)

・拘禁中の個人または手続きが進行中の個人

・技術また経験を通し有用な情報を提供できる識者

・政治家、宗教指導者など。

22. 代表団は、弁護士会の構成員、刑事弁護人、法学の教授、活動中の弁護士、法廷弁護士、事務弁護士とも会合する。

23.  参加者の自由な表現を妨げずまた報復防止のため、政府代表者はこれらの会合に出席しない。

自由剥奪の場所への訪問

24.  自由剥奪の場所への訪問は、作業部会の構成員が保有する情報を確認し、また囚人や被拘禁者との様々な会合や対談の中で追加情報を収集できるよう、国別訪問の開始から2~3日後に開始すべきである。

25.  自由剥奪の場所への訪問は、休業日を含め曜日を問わずに行うことができる。

26.  当該国内の各地域で訪問する自由剥奪場所は、双方の合意により決められる。それでもなお、作業部会は、公式計画に記載されていない自由剥奪場所を予告なく訪問する権利を持つ。

27.  政府は、国別訪問において代表団の構成員が自由にその職務権限を行使できるよう公式の認証文書を発行する。

28.  作業部会の面前でプレゼンテーション(パワーポイント等)が必要な場合、作業部会の構成員がその任務に直接関連する質問をできるよう、可能な限り簡潔に行うべきである。

29.  さらに、効率性の観点から実行的な場合は、訪問中、構成員を2つのグループに分けることがある。

30.  自由を剥奪された人との面談は、立会人なく、警備員や行政職員のいないところで、非公開で行われなければならない。

国内における移動

31.  移動は、勤務時間を妨げないように計画しなければならない。移動は、午後の遅い時間帯や早朝の場合もありうる。

国別訪問終了時の最終声明の作成

32.  計画は、訪問終了時に発表する声明内容について代表団が議論するための十分な時間を確保するべきである。計画は、代表団の作業部会構成員の承認を得る前に事務局が声明の草案作成のための十分な時間も確保するべきである。

訪問終了時の報告会

33.  国別訪問の最後に、代表団は政府と報告会を行い、代表団長が政府代表者に予備的所見と訪問後に行うべき手続きを知らせる。

34.  報告会において政府は声明文を正式に受け取る。政府は、希望する場合、当該段階では代表団は報告書を提出しておらず予備的所見を伝えただけであることを念頭に置いた上で、意見や所感を述べることができる。

記者会見

35.  報告会の後、代表団は自身が選択した場所、可能であれば国際連合の施設内において記者会見を開き、メディア、その他の関連の利害関係者、一般市民に予備的所見を伝え質問に答える。

36.  主たる調査結果を反映したプレスリリースを記者会見において出す。

報告書の採択及び発表

37.  国別訪問報告書は、作業部会のいずれかの本会議で暫定的に採択される。

38.  その後、報告書は、受入国の政府に所感を求めるため送付され、報告書の最終採択の前に、事実・法律上の誤りに対する意見や所感を考慮する。それでもなお、作業部会は、必要に応じて自らの分析、解釈、および条件を示す権利を持つ。

39.  報告書は、作業部会で採択された後、人権理事会の報告周期に従い、理事会に提出される。この提出の後、関係政府が作業部会により実施された作業に対する評価を行う機会をもつ双方向対話がなされる。

勧告についてのフォローアップ

40.  報告書の人権理事会への提出後、政府は作業方法パラグラフ32にしたがい、報告書記載の勧告の実施状況を作業部会に書面で報告するため、2年の期間が与えられる。この文書は、市民社会との協議により作成されることが望ましい。

41.  さらに、この対話を促進するため、勧告の実施状況をより徹底的に評価するためのフォローアップ訪問を、政府の招請や作業部会からの要請の受諾に基づき実施することもできる。

第69回会合において採択(2014年4月)


[2021年8月24日公開]