2018年12月10日に採択された「国連移住グローバル・コンパクト」によって、国連移住ネットワーク(United Nations Network on Migration)が設立されました。その中の入管収容代替措置に関するワーキンググループが、新型コロナウイルスの世界的な流行に際し、2020年4月27日に「COVID-19と入管収容:政府と他のステークホルダーは何ができるか?」(COVID-19 & Immigration Detention: What Can Governments and Other Stakeholders Do?)を発表しました。

同文書の弁護士有志による日本語訳を掲載します。

(日本語訳のPDF)COVID-19と入管収容:政府と他のステークホルダーは何ができるか?

(原文のPDF)COVID-19 & Immigration Detention: What Can Governments and Other Stakeholders Do?(外部リンク)

国連移住ネットワーク(United Nations Network on Migration)はこちら(外部リンク)


国連移住ネットワーク

入管収容代替措置に関するワーキンググループ

COVID-19と入管収容:政府と他のステークホルダーは何ができるか?

概要

国連移住ネットワークは、「移住のためのグローバルコンパクト」の実施に向けて、すべてのパートナーを支援することに取り組んでおり、この協力的枠組みが、社会のすべてがCOVID-19への集団的対応に貢献でき、またその影響から等しく守られることを確保するための貴重なツールを提供することを認識している。

このブリーフィングは、その目的に向けた、同ネットワークによる、COVID-19パンデミックのさまざまな側面と、それらが移住者やコミュニティとどのように関連しているかについての一連の検討の一部である。 本文書は、移住者収容の文脈でのCOVID-19の防止と対応について、国やその他のステークホルダーに実用的なガイダンスを提供することを目的としており、有望な実践例を有用なモデルとして取り上げている。 すべてのパートナーからのフィードバックを待っており、継続的にこれらの推奨事項を更新していく。

ワーキンググループは以下の者により共同で主導されている:

• Andrea Bruhn Bové, UNHCR (bruhnbov@unhcr.org)

• Irene de Lorenzo-Cáceres Cantero, UNICEF (idelorenzocaceres@unicef.org)

• Silvia Gómez Moradillo, International Detention Coalition (sgomez@idcoalition.org)

COVID-19のパンデミックは、脆弱な状況や疎外されたコミュニティの人々に不均衡に影響を及ぼしている[1]。移住者も例外ではなく、特に入管収容中の移住者はそうである。彼らが収容されているしばしば過密状態にある施設では、誤報が一般的であり、物理的な距離を保つことが不可能であり、衛生や衛生設備が不十分であり、人材が不足している。

新型コロナウイルスが収容場所に広まると、移住者と職員の両方にとって感染のリスクが高くなり、個人防護具へのアクセスが制限される。移住者はしばしば適切な情報と医療サービスを得るのに苦労している。高齢者、子ども、女性、障害者、その他の人々は、さらなる課題に直面している。したがって、COVID-19についての被収容者間の不安の高まりのために、最近、入管収容施設で緊張が高まっていることは当然のことである。

多くの国が移住者の権利を優先し、入管施設の混雑解消を選ぶようになっている一方、残念なことに、より多くの移住者をより長期間収容したり、非合法的に強制送還するためだけに移住者を解放する国もある。この理由には、国境閉鎖、入国手続きと送還の一時停止、移住者の差別的な全面的な収容を適正手続きなしで行うことを正当化するために用いられる公衆衛生上の懸念、入管収容の代替措置を取るための限られた能力、パンデミック時に国境を越えるケース管理を行うことは不可能であることなどが含まれる。

COVID-19の文脈での入管収容をより用いることの影響は深刻である。それは、ある者にとっては過密状態にある施設での無期限収容であり、他の者にとっては脆弱性の長期にわたる状況であり、すべての人、つまり、被収容者、職員、その家族、そしてコミュニティのすべての人々にとってより高まる感染リスクである。

この数週間で、多くの法的および政策的方針と運用ガイダンスが作成され、自由を奪われたすべての人々を保護することを含むCOVID-19危機への対応において、各国が遵守すべき国際法によって確立されたパラメーターが明らかになった[2]

 この文書は、これらの方針やガイダンスを基礎としてこれを補完し、収容代替措置を優先することにより、COVID-19の予防と対応にあたって国家や他のステークホルダーを支援することを目的としている。

 特に、各国およびその他のステークホルダーが「移住のためのグローバルコンパクト」の目標13を実行化させるのを支援することを目的としている。目標13において、政府は、「国際法に沿った収容に対する非収容的代替案を優先し、収容を最後の手段の尺度としてのみ使用して、移住者のいかなる収容に対しても人権基盤型アプローチをとる」という制約を再確認している。これには、とりわけ、「適正手続と比例原則を保障することによって、移住者に収容が与える否定的で潜在的な持続的影響を減少させること、それは、国際人権法に沿って、収容が最短期間であること、身体的および精神的に完全な状態の保護」「収容されている、または収容される可能性のあるすべての移住者に対し、司法へのアクセス、情報へのアクセスおよび収容命令の定期的な見直しの権利を与えること」、そして、「その移住者としての地位を問わず、子どもの権利と最善の利益を常に守り尊重すること。それは、収容に代替する非拘束的な状況での実行可能な範囲の利用可能性とアクセス可能性を確保し、教育と健康管理へのアクセスを保障する社会に基礎を置いたケアの調整を支持し、家族生活と家族統合への権利を尊重し、国際移住の文脈において子どもの収容の実務を終わらせること」を含む[3]

 この誓約を考慮し、現在のCOVID-19パンデミックに鑑み、関連するステークホルダーと協力して活動する国連移住ネットワークは、次のことを要請する。

1 移住又は健康に関連する理由による移住者の収容を止め、入管収容の使用の一時停止を導入すること。

2 国際法を遵守した被拘禁的なコミュニティベースの入管収容代替措置を拡大して緊急に実施すること。

3 適切なセーフガードを講じ、収容されているすべての移住者を、非拘禁的な、コミュニティベースの代替措置へと解放すること。

4 代替措置が拡大し実施されるまでの間入管収容の状況を改善させること。

以下では、国や全ての関連するステークホルダーが上記4つの要請に応えることができるよう支援することを目的として、実践的な推奨事項、行動要請、有望な実践、リソースを紹介する。

※続きは日本語訳PDFをご覧ください