2005年12月12日、人権委員会第62会期で発表された、国連恣意的拘禁作業部会審議結果第8号(インターネットの使用に関連した/結果としての自由の剥奪)の原文と日本語訳です。

審議結果第8号(原文・英語)PDF (国連人権高等弁務官事務局サイト)

審議結果第8号(日本語訳)PDF (恣意的拘禁ネットワーク訳)

これまで出された国連恣意的拘禁作業部会の改定審議結果リスト(英語)(恣意的拘禁作業部会ホームページ)


(恣意的拘禁ネットワーク 日本語訳)

E/CN.4/2006/7

審議結果第8号 インターネットの使用に関連した/結果としての自由の剥奪

32.  恣意的拘禁作業部会は、最近では、インターネットの使用に何らかの形で関連した、あるいはその結果として自由を奪われたケースに直面することが多い。一般的にインターネットと呼ばれるワールドワイドウェブを介した情報、アイディア、意見の受信または拡散に基づく、主に刑事上の有罪判決を受けて自由を剥奪された個人のための通報の数は増加し続けている。

33.  また、最近では、インターネットを利用してテロ行為を準備・実行するという新たな事件も発生している。同時に、インターネットの利用がテロリストの目的になっていると主張して、自由の剥奪に訴える国もあるが、実際には、表現の自由を制限し政敵を弾圧するための口実に過ぎないことが後に明らかになっていると作業部会は指摘する。

34.  しかし、作業部会は、インターネットの利用に関連した自由の剥奪がすべてそれ自体恣意的であるわけではないことを認識している。インターネットの利用に起因する自由の剥奪が正当化される状況もありうるし、実際に存在する。作業部会は、これまでに把握されたインターネット関連の個人通報の大半において、当該個人が単にまたは主として表現の自由を行使したために処罰されたことから、当該自由の剥奪は恣意的であると判断してきた。したがって、当該自由の剥奪は、作業部会に提出された事例の検討に適用されるカテゴリーのうち、カテゴリーIIに該当する[1]

35.  作業部会は、この問題の複雑さは、検討に値するものであると考える。作業部会が、ある状況における自由の剥奪が、当該事案を取り巻く事実によって正当化されるかどうかを評価するために適用される基準を判断すれば、作業部会自身にとっても、各国政府にとっても有益なことであろう。

36.  インターネットは、多くの点で、書籍、新聞、手紙、その他類似の郵便サービス、電話、ラジオ放送、テレビといった他のあらゆる手段による情報やアイディアの拡散・受信に匹敵するコミュニケーション手段である。しかし、インターネットを通じた表現の自由の行使は、他のより伝統的なコミュニケーション手段との間に重要な違いも存在する。つまり、インターネットによる情報の頒布と受信は、より広く、より速く行われる。また、インターネットは誰でも簡単にアクセスできる。さらに重要なことは、インターネットは、特定の場所ではなくグローバルな規模で作動するコミュニケーション方法であり、国の領域境界に基づかないということである。

37.  しかし、インターネットと他の通信手段とのこの違いは、本質的にはむしろ技術的なものであり、表現の自由の意味と内容に決定的な影響を及ぼすものではない。したがって、インターネットが特定の通信形態であるという特徴があるにもかかわらず、同じ国際法の規則が、表現の自由とその適法な制限の条件について適用される。この自由は、インターネットまたはその他の手段を通じて行使されなければならない。

38. 結論として、インターネットを通じて情報を提供したり、受け取ったり、探したりする自由は、他の形式による意見、アイディア、信念の表明と同様に、国際法によって保護されている。

39.  犯罪捜査、訴訟手続き、有罪判決、または行政機関の枠組みの中で取られたインターネットユーザーを拘束するいかなる措置も、表現の自由の行使を制限するものであることは間違いない。国際法で規定された条件に従わない限り、当局によるこのような制限は恣意的であり、違法である。

40.  表現の自由を行使したために自由を奪われた人を代理して作業部会に提出される個人通報において、政府は、自由の剥奪は、共同体全体の利益のため、あるいは他者の権利や評判を守るためにとられた国家の正当な活動の結果であると主張することが多い。自由の剥奪という形で当局が行った制限が国際法上許されるものかどうかについて、対立相手(以下、「情報源」)が意見を異にすることが多い。

41.  自由の剥奪が国際基準に適合しているかどうかを評価するため、作業部会は提示された状況が、自由の剥奪による表現の自由の制限を正当化するかどうかケースバイケースで検討する。

42.  このような評価を行うにあたり、作業部会の出発点となるのは、ICCPR第19条の解釈を示す人権委員会の一般的意見が示唆する基準であり、その第4パラグラフは次のように記される。

「(第19条の)第3項は、表現の自由についての権利の行使が特別の義務及び責任を伴うことを明示的に強調する。そしてこの理由から、本権利に対する一定の制限は、他の者の利益又は共同体の全体としての利益のいずれかに関わる場合に許される。しかし、締約国が表現の自由の行使に対し一定の制限を課す場合、その制限は、権利それ自体を否定するような状況に陥らすことはできない。第3項は、条件を定めており、そして制限が課されうるのはこの条件に服する場合のみである。つまり、制限は、「法律によって定められ」なければならないし、第3項(a)及び(b)で定める目的の一つのためにのみ課することができ、そしてそれら目的のうち一つのために当該締約国にとって「必要」なものとして正当化されなければならない[2]。」

43.  自由の剥奪という方法による表現の自由への制限が正当化されるのは、自由の剥奪が国内法に法的根拠を持ち、国際法に反しておらず、他人の権利または名誉の尊重を確保するため、あるいは国家安全保障、公序良俗、公衆衛生や道徳の保護のために必要であり、追求された正当な目的と比例していることが示された場合のみであるというのが、作業部会の確立した慣行である。国家安全保障や公序良俗への漠然とした一般的言及は、適切に説明または文書化されない限り、自由の剥奪という方法による表現の自由の制限が必要であると作業部会に確信させるには不十分である。より一般的に、作業部会は、公的機関が、公共の秩序や共同体を守るために必要であるという根拠のない理由で、個人のプライバシー(インターネットを通じて個人間でコミュニケーションをとる自由を含む)を侵害することを容認できない。

44.  作業部会は、多くの通報において、非暴力的方法で、政治・経済・人権問題について個人的意見を表明しただけで自由を奪われたという理由で、自由の剥奪が恣意的であると判断した。

45.  確かに、表明された意見は、鋭く批判的であること、激烈な形であること、政府の公式の政策に対して公然と反対していることが多い。しかし、作業部会の立場は、表現の自由が、すべての個人の発展のための基本条件の一つであるというものである。ICCPR第19条第3項に基づいて課せられる制限にしたがい、表現の自由は、好意的に受け止められたり、無害であるとみなされたり、些細な問題とされる情報や思想だけでなく、国家や国民の一部を攻撃または困惑させる情報や考えにも適用される。このような寛容・寛大さが求められ、これなくして社会発展はない。

46.  作業部会の経験によれば、意見の表明者(authors)が処罰される意見表明の形態や方法は、相当広範である。これには以下のものを含むが、これらに限定されない。政府政策の公然の非難。反対運動や公衆デモの組織、創設、参加。主として当該宗教が公式に認められていない、または、容認されていない宗派や宗教である場合に、自分の宗教的信念を公に表明すること。公式の国家イデオロギーに反対するために壁に描かれた落書き。政府の汚職疑惑を議論する公開討論実施を人々に呼びかける印刷物やパンフレットの作成・配布。来るべき選挙での野党への投票勧誘。外国のラジオ・テレビ放送の聴取・視聴。政治的に物議を醸した人物の葬儀への参加。

47.  各国政府は、例示として上述した行動に参加した個人が表現の自由の許容範囲を超えたと主張することが多いが、作業部会の立場としては、平和的、非暴力的な意見表明・表示、または情報の発信・受信は、それがインターネットを通じたものであっても、民族的、人種的、宗教的憎悪や暴力の扇動に当たらないのであれば、表現の自由の範囲内にあるとする。よって、このような行為を行ったという理由だけで自由を奪うことは恣意的である。

48.  テロリズムが人類にとって最も憂慮すべき脅威の一つとなっているため、インターネットは、テロリストにとって、テロ行為を扇動、準備、組織、実行するためのますます強力な手段となっている。この理由により、テロ目的でのインターネット使用を防止、罰する国家の行動は正当化できる。したがって、インターネットユーザーが、テロ計画の準備や実行を目的とした情報をインターネットを通じて互いに提供、発信、受信する意思があることに関連して、自由を剥奪することは、原則として正当である。このような行為への参加は、インターネットユーザーの表現の自由を理由に正当化できない。

49.  ICCPR第19条第3項に基づく国の安全または公共の秩序を守るための正当な利益により正当化されるインターネットユーザーの自由の剥奪であっても、上記行為は、関連国際文書規定の公正な裁判に関する規範の不遵守の場合には、恣意的なものとなりうる。

50. 人類の歴史において、最も重要な発明や発見の後、科学の発展に多大なプラスの効果をもたらしたように、インターネットの登場は、コンピュータ・ネットワークの集中とグローバル化によりもたらされた重大な変化とともに、いくつかのマイナスな付随現象を伴う。サイバー技術の利用により社会に不利益をもたらす分野が徐々に明らかになってきた。コンピュータ・ネットワーク全般、特にインターネット利用のセキュリティや安全性を脅かしたり、危険にさらしたりする不正行為を防止するために、多くの場合刑事分野において対策がとられている。インターネットは国境を越えた規模で機能するため、国際社会は、インターネットに対して、あるいはインターネットを利用して行われる深刻な不正行為は、共通の行動によってのみ防止できることをすでに認識している。サイバー犯罪との闘いを目的としたいくつかの国際文書はすでに公になり[3]、他の文書も準備されている。さらに、インターネット上での倫理行動を特定する試みもなされている[4]

51.  国際社会が犯罪行為とみなす行為のリストはまだ完全ではないが、違法なアクセス、違法な傍受、データへの干渉、システムへの干渉、コンピュータ関連の偽造、コンピュータ関連の詐欺、著作権や関連する権利侵害に関する犯罪などが含まれる。さらに、インターネットを利用して子どもに対して行われる犯罪が増加していることを考慮すると、児童の売買、児童に対する性的虐待、児童ポルノに関する犯罪は、このリストにおいて、特に重要な位置を占める。

52.  原則として、上記のまたは類似の不正行為を行った疑いのある人は、違法行為または犯罪行為を正当化するために表現の自由を援用してはならない。当該事案の具体的状況が違うことを証明しない限り、作業部会は、一般的な犯罪者が起訴された犯罪が、何らかの形でコンピュータ・システム全般、またはインターネットの使用に関連しているという理由だけで、当該自由の剥奪が恣意的であるとは考えない。


[1] 以下の意見書を参照せよ。35/2000(中国)、E/CN.4/2002/77/Add.1、22頁;1/2003(ベトナム)、E/CN.4/2004/3/Add.1、23頁;14/2003(モルディブ)、E/CN.4/2004/3/Add.1、75頁;15/2003(チュニジア)、E/CN.4/2004/3/Add.1、79頁;25/2003(中国)、26/2003(中国)、15/2004 (中国)、15/2004(ベトナム)、19/2004(ベトナム)、E/CN.4/2005/6/Add.1、それぞれ24、25、62、73頁。

[2] 一般的意見第10号「表現の自由(第19条)」パラグラフ4。

[3] 例えば、サイバー犯罪条約(2001年11月23日採択、European Treaty Series, No. 185)を参照せよ。

[4] 例えば、欧州評議会議員会議の勧告1670(2004)「インターネットと法」を参照せよ。


審議結果(deliberations)とは

国連恣意的拘禁作業部会は、その決定に一貫性を持たせるため、また、各国が恣意的となるような自由の剥奪をするのを未然に防ぐために、「審議結果」を策定して、自由の剥奪が恣意的となる基準を示しています。

[2021/10/19最終更新]