2023年3月23日、韓国憲法裁判所で、強制退去命令が出された人に対する入管収容が、憲法に合致しないという決定が出されました。上限のない無期限収容であること、中立的な機関の審査によらない収容であることは、日本の入管収容と通じるものがあります。
憲法裁判所2023年3月23日決定PDF(日本語訳)※外国人ローヤリングネットワーク提供
事案の概要
申請人が2017年11月22日に韓国に入国したところ、ソウル出入国・外国人庁長は、申請人が虚偽の招請行為によって入国したという理由で、出入国管理法第46条第1項第2号、第3号、第7条の2 第2号、第11条第1項第3号、第4号により、強制退去命令を出すと同時に、同法第63条第1項により保護命令(※収容する命令)を出した。これに対し、申請人は、上記強制退去命令及び保護命令の取消を求める訴えを提起するとともに、裁判係属中に、保護命令に対する違憲法律審判を申請し、裁判所はこの申請を受け入れた。
争点
保護命令を定めた出入国管理法第63条1項は、基本原則である過剰禁止の原則と、憲法第12条の適法手続の原則に反し、身体の自由を侵害するか
(63条1項)
地方出入国・外国人管署の長は、強制退去命令を受けた者を旅券未所持または交通便未確保等の事由で即時大韓民国の外へ送還できない場合、送還できる時までその者を保護施設で保護できる。
(「保護」とは、強制退去の対象に該当すると疑うに足りる相当の理由がある者を出国させるため、外国人保護室、外国人保護所、またはその他法務部長官が指定する場所に引致して収容する執行活動を意味する)
判決要旨
(身体の自由について)
憲法12条1項の身体の自由は、人間の尊厳と価値を具現するための最も基本的な最小限の自由であり、すべての基本権保障の前提になるもので、在留資格の有無によって変わるものではない。したがって、厳格な審査基準が適用されなければならない。
(過剰禁止の原則について)
①目的は、強制退去対象者を送還できる時まで保護施設に収容し、強制退去命令を容易かつ効率的に執行できるようにすることで、外国人の出入国と在留を適切に統制・調整し、国家の安全と秩序を図ろうとすることにあるため、正当である。
②送還できる時まで保護施設に収容して身柄を確保することは、強制退去命令の執行を確保する効果的な方法であり、手段の適合性も認められる。
③しかしながら、保護(収容)は、あくまで送還できる時までの一時的な措置であるため、必要な合理的な期間内でのみ認められる。期間上限の定められていない無期限収容は、権利侵害の最小性及び法益均衡性の要件を満たさない。(過剰禁止の原則違反)
(適法手続の原則について)
強制処分による身体の自由の制限は、執行機関(入管)から独立した、中立的な機関が審査、統制しなければならない。また、当事者に意見及び資料を提出する機会を保障しなければならない。保護命令制度は、保護の開始または延長の段階で中立的な機関による統制手続がなく、当事者に意見を提出する機会を保障していないため、憲法上の適法手続の原則に反する。
(結論)
63条1項について、憲法不合致決定を宣告する。
しかしながら、単純違憲決定をすると、保護の根拠規定がなくなってしまい、強制退去命令を受けた者の身体拘束が一切できなくなってしまう。そこで、2025年5月31日までに改善立法を行うよう促し、改善立法が行われなければ、同年6月1日から63条1項は効力を失う。
(裁判官5人の憲法不適合意見、1名の補充意見、3人の反対意見)