人権条約機関とは

国連には、自由権規約や拷問禁止条約などの人権条約ごとに、締結国が条約を履行しているかどうかを監督する人権条約機関があります(自由権規約委員会、拷問禁止委員会など)。

人権条約機関には、締結国に対して定期的に人権状況について報告書の提出を求め、NGOなどの情報提供を踏まえて審査を行う「政府報告書審査」という制度があります。日本の拘禁制度については、人権条約機関の政府報告書審査においても、改善するよう指摘がなされています。

自由権規約委員会 第6回日本定期報告書審査に関する総括所見(2014年)

自由権規約委員会が第6回日本定期報告書審査のまとめとして2014年8月20日に採択した「総括所見」では、精神医療入院、刑事拘禁、入管収容それぞれについて、改善が求められました。

強制入院(パラグラフ17)

委員会は、多数の精神障害者が極めて緩やかな要件の下で強制入院を余儀なくされ、かつ、自らの権利侵害に対して異議申立てをする効果的な救済手段を利用できないこと、また、代替サービスの欠如により入院が不要に長期化していると報告されていることに懸念を有する

委員会は精神医療入院についてこのように指摘し、日本政府に対して、(a) 精神障害者に対して、地域に基盤のあるサービス又は代替のサービスを増やすこと、(b) 強制入院は、最後の手段としてのみ課せられ、必要最小限の期間に限って、かつ、本人を危害から守り又は他者を害することを防止する目的のために必要かつ相当な時にのみ行われることを確保すること、(c) 精神障害者の施設に対して、虐待を効果的に捜査し、制裁を科し、かつ、被害者及びその家族に対して賠償を提供することを目的として、効果的かつ独立した監視及び報告体制を確保することを求めました。

代替収容制度(代用監獄)と強制された自白(パラグラフ18)

委員会は、締約国が、利用可能な資源が不足していること及びこの制度が犯罪捜査にとって効率的であることを理由として、代用監獄の使用を相変わらず正当化していることを遺憾とする。委員会は、起訴前に、保釈の権利がないこと、また国選弁護人の援助を受ける権利がないことが、代用監獄において強制的な自白を引き出す危険を強めていることを依然として懸念する

”代用監獄”というのは、起訴されていない被疑者が拘置所ではなく、警察の留置施設に拘禁されることを言い、その間を利用して取り調べを受け、自白を強要されるという人権侵害があることが指摘されています。委員会は日本に対して、”代用監獄”を廃止するためにあらゆる手段を講じるよう求め、具体的には、起訴前の保釈制度の新設や、取調べへの弁護人の立ち会い、取調べ時間の厳格な制限、取調べ中の人権侵害に対する救済メカニズムを作ることなどを求めました。

難民申請者及び非正規滞在者の退去強制と収容(パラグラフ19)

・・・委員会は、さらに、難民不認定処分に対して執行停止の効力を有する独立した異議申立ての制度を欠いていること、及び十分な理由の開示もなく、かつ、収容決定に対する独立した再審査もないまま、行政による収容が長期化していることに懸念を有する

委員会は日本の退去強制手続や難民認定制度について問題点を指摘する中で、入管収容についても言及し、「収容は最も短い適切な期間内において行われ、かつ、行政収容以外の既存の代替措置が適正に考慮された場合においてのみ行われることを確保し、並びに、移住者が裁判所に対して訴えを提起し、自らの収容の合法性について審査を求めることができることを確保するための手段を講ずること」を求めました。

拷問禁止委員会 第2回日本政府報告書審査に関する総括所見(2013年)

2013年5月29日、拷問禁止委員会は日本の第2回定期報告書審査において「総括所見」を採択し、精神医療入院、刑事拘禁、入管収容それぞれについて、改善を求めました。

退去強制を控えた収容(パラグラフ9)

出入国管理及び難民認定法に基づく退去強制を命じられた庇護申請者に対して長期の、場合によっては期限の定めのない収容を行っていること、及び、こうした収容決定に対して独立した再審査がない・・・

委員会は、パラグラフ9「ノン・ルフールマン原則と退去強制を控えた収容」において、「庇護申請者の収容は最後の手段としてのみ使われ、収容が必要な場合でも収容期間を可能な限り短くするようにして、強制退去を控えた収容の期間に上限を導入すること」「出入国管理及び難民認定法に定められた収容以外の選択肢をさらに利用するようにすること」などを日本政府に勧告しました。

代用監獄(パラグラフ10)、不服申立ての仕組み(パラグラフ12)、拘禁状況(パラグラフ13)、独居拘禁(パラグラフ14)

委員会は、独居拘禁がしばしば期間の制限なく、幅広く長期間にわたって使用され続けていること、及び、受刑者の隔離の決定は、施設の長の裁量に委ねられていることに、依然として強い懸念を有する・・・

委員会は、刑事拘禁について多くの勧告を行いました。代用監獄については「締約国の法と実務を国際基準に完全に合致させるため、代用監獄制度の廃止を検討するべきである」等の勧告が、刑事拘禁に対する不服申立てについては「不服申立に特化した独立かつ効果的な機関の設立を検討」する等の勧告が、拘禁状況については「被拘禁者を拘束する器具の使用を完全に禁止することを検討すること」等の勧告が、独居拘禁については「独居拘禁は、厳しい監督のもとで最小限の期間、かつ司法審査が可能な状況での最後の手段に留まることを確実にするため、法律を改正すること」等の勧告がなされました。

精神保健ケア(パラグラフ22)

委員会は、多数の精神障害者、すなわち心理社会的障害と知的障害のある人々の双方が、精神保健ケア施設に非自発的に、かつ、しばしば長い期間、収容されていることに引き続き懸念を有する。

委員会は、パラグラフ22「精神保健ケア」において、「非自発的治療と収容に対し効果的な司法的コントロールを確立すること、及び、効果的な不服申立の機構を確立すること」、「 外来及び地域でのサービスを進め、収容されている患者数を減らすこと」、「精神医療及び社会的ケア施設を含む、自由の剥奪が行われるすべての場において、効果的な法的なセーフガードが守られること」など、多数の勧告を行いました。

人種差別撤廃委員会 第10回・第11回定期報告書審査に関する総括所見(2018年)

委員会は、2018年8月30日に採択した総括所見のパラグラフ36「難民及び庇護希望者」において、入管収容について言及し、「締約国が収容所の収容期間の上限を導入することを勧告し、庇護希望者の収容が最後の手段としてのみ、かつ可能な限り最短の期間で用いられるべきであり,収容以外の代替措置を優先するよう努力すべきとの、前回の勧告CERD/C/JPN/CO/7-9, パラグラフ 23)を繰り返す」と勧告しました。

強制失踪委員会 第1回政府報告審査に関する総括所見

委員会は、2018年11月14日に採択した総括所見のパラグラフ33「拘禁の合法性に関する救済措置」において、「医療施設及び入国者収容施設に拘禁されている者を含む自由の剥奪の合法性に異議を申し立てるために、本条約第17条2(f)に沿って利用可能な救済措置が欠如していることを懸念する」と述べ、さらに、現在の人身保護法の要件は不十分であると指摘しました。

外務省ウェブサイト(総括所見の日本語訳)(外部サイト)

子どもの権利委員会 第4回・第5回定期報告書審査に関する総括所見(2019年)

子どもの権利委員会は、2019年3月5日に日本の定期報告書審査の総括所見を採択し、入管収容、少年の刑事拘禁について次のとおり言及しました。

子どもの庇護希望者、移住者および難民(パラグラフ42)

パラグラフ42において、「庇護希望者である親が収容されて子どもから分離されることを防止するための法的枠組みを確立すること」、「庇護希望者または移住者であって保護者のいない子どもまたは養育者から分離された子どもの収容を防止し、このようなすべての子どもが入管収容施設から直ちに放免されることを確保し、かつこれらの子どもに居住場所、適切なケアおよび教育へのアクセスを提供するために、公式な機構の設置等も通じた即時的措置をとること」などの勧告がなされました。

少年司法の運営(パラグラフ44、45)

委員会はパラグラフ45において、「子どもが無期刑を科されており、かつ、仮釈放までに必要な最低期間よりも相当長く拘禁されるのが一般的であること」等について懸念を表明し、パラグラフ46において「審判前および審判後の自由の剥奪が最後の手段としてかつ可能なもっとも短い期間で用いられ、かつ、当該自由の剥奪がその取消しを目的として定期的に再審査されること」、「無期刑および不定期刑を用いることを再検討し、かつ、拘禁がもっとも短い適切な期間で用いられることを確保するために特別な仮釈放制度を適用すること」などの勧告を行いました。

2021/4/13更新(このページについては新情報に伴い随時更新します)